INTERVIEW
01

「社会を変えたい」

大学時代の専門は、確率過程統計学。「AIのすべての基礎がつまった学術研究です」と話す村田だが、当時この領域を選んだのは、その内容よりも「産学連携」のスタイルであることを重視したためだ。「研究とは、何かを解明するためではなく人の暮らしや社会を変えるための活動であるべきだと、学生時代から考えていました。産学連携で企業と共に取り組めば、研究にもその先のお客様がいます。そこを意識して、何かしらをアウトプットすることにこだわりながら取り組んでいました」。

この価値観は、就職活動でも同じだった。「世の中を変える仕事」という漠然としたイメージを持ち、絞り込んだ業界は商社とコンサルティング。本命の企業もあり、いくつかの会社説明会や試験にも参加していたが、正直なところ「会社説明会だけでは、仕事のイメージは全く見えて来ない」と感じていた。そこで村田は、ある企業の採用担当に「実際にビジネスに関わっている人と会って話をさせていただけませんか」と掛け合ってみたという。その企業こそがシグマクシスだった。

「正直ダメもとという気持ちもあったのですが、すぐにディレクターとの面談の場が設けられました。大企業ではこんな対応は、まずありません。企業としてのフットワークの軽さにも、魅力を感じました」

こうして漕ぎつけた面談の相手から、大きな衝撃を受けることになる。

「キャラクターの濃さに加えて、テクノロジーでビジネスを変えて行くことへの情熱が半端ない。こんな人がいるんだと驚きました。さらには社外と柔軟につながって、多様な人々とチームで取り組むというワークスタイルも面白く、他社との大きな違いを感じました」

その確信から、入社を決断。村田は仕事の「面白さ」だけでない多くを学ぶ一歩を踏み出した。

INTERVIEW
02

必死で作った提案書は
「ノーバリュー」

2015年入社時同期とともに(後列中央)

「入社時の印象として残るのは、思った通りのフラットな文化です」と振り返る。「入社後の新卒トレーニングで最初に言い渡された方針は『今やるべき事に、あるべき姿勢で取り組むべし』というシンプルなものでした。諸先輩方の行動も判断もその方針からブレがなくロジカルだから、理不尽さがない。そういった意味でのフラットさを感じました」。とはいえ、プロフェッショナルへの垂直立ち上がりを猛スピードで目指すのが、シグマクシスの新卒研修。村田にとっても一筋縄にいくものではなかった。

「私の代は宮崎のリゾート施設に約3週間滞在しながら、コンサルタントとしての基本をインプットし、その瞬間に実践して身につけていくというプログラムが組み込まれていました。その内容の濃さやスピード感に必死についていく毎日でしたが、中でも難度が高かったのは、滞在したリゾート施設をお客様として新規事業開発を提案するプロジェクトの実践。チームで必死になって提案書をつくりました」

練りに練って、それなりに自信のあるものが出来上がったはずだった。しかし、先方社長への最終提案の後、当時のトレーニング責任者からのフィードバックは「ノーバリュー」の一言。

「むちゃくちゃ悔しかったですね。当時はその思いばかりで理由が理解できませんでしたが、それでも理由があってそういわれた事だけは分かっていました」

なぜ、ノーバリューだったのか。一年後、村田はその意味に気づくことになる。

INTERVIEW
03

認めてもらえなさすぎて、
吹っ切る

初プロジェクトは、建設・不動産業界のお客様向けの基幹システム再構築のPMO。得意としていたAI関連の案件ではなかったことに戸惑いはありつつも、意気込みもあった。が、ほどなくして壁に突き当たることに。

「何をやっても先輩から認めてもらえませんでした」

プロジェクトチームにジュニアレベルは自分だけという環境で、周囲に圧倒され必死に食らいついても、なかなか評価は上がらない。次第に焦りも加わり、思い悩んだりもした。

「悩みつくして、ある時吹っ切れてしまいまして。もう上に認めてもらえなくてもいいや、あとは目の前のお客様のためだけに頑張ってみようと」

そこからは、がむしゃらだった。お客様のために何をすべきかという基準だけで考え動いた。ひと通りやり切って、プロジェクト契約期間が終わる際にプロジェクトリーダーから呼び出された。そこで伝えられたのは「お客様から、後続プロジェクトに村田を残すよう言われている。ということで、残します」と、思いもよらない言葉だった。お客様に認めていただけたこと、それによって初めて上司に認められたのだということが分かった。込み上げてきたのは、まずこのうえない嬉しさ。そして「こういうことか」という、何かがつながった感覚だった。

「思えば新人研修も含め、自分への評価を追い求めてタスクをこなしていただけ。お客様を見ていなかったし、お客様の先にいるお客様も見ていませんでした」

スタンスを変えたことで、自然と仕事にのめり込み、何をやるべきかを掴んで行った。そうした中で新たなお客様とのリレーションができ、次なる顧客課題も掴むことに。これは、プロジェクトチームにとって新規のチャネルを開拓したと言えることでもあった。

結果は追い求めるものではなく、ついて来るもの。コンサルタントとして自分がやるべきことをやり続けていれば、認められるのだと知った瞬間だった。

INTERVIEW
04

プロジェクトの成果とは
何かを知る

約2年半にわたるPMOプロジェクトへの参画後は、いよいよAI関連のプロジェクトにアサインされた村田。製造業、小売り、化学など、多岐にわたる業界のお客様によるAI活用プロジェクトを経験し、入社3年目でプロジェクトリーダーも任された。中でも印象的だったのは、小売業のお客様向けAI活用プロジェクト。ある商品群の販売予測と、それを発注へ展開するアルゴリズムを開発した。

「実証実験としてのプロジェクトではあったのですが、開発したアルゴリズムの完成度が高く、お客様から高い評価を頂きました。お客様のAI活用に向けたベースができたことに加え、様々な企業でのAI活用にも展開できるナレッジを確立できたと自負しています」

一方で、チーム作りには骨を折った。

「お客様メンバー、他社からの参画メンバー、そしてシグマクシスの新卒など、AI活用の経験が浅いチームでのスタート。全体のレベルアップを図りながらプロジェクトを組み立てていくことが必要でした。正直、この時期の睡眠時間はおかしなことになりましたが、チームのレベルアップのためのアクションと、プロジェクトのデリバリーをどうにか同時並行させることができました」

プロジェクトは、一人が持つ高い知識だけで動かせるものではない。チームメンバーひとり一人の成長、そしてチームの成長という価値も手にした経験は、全体を俯瞰し様々な能力を生かしながらプロジェクトを牽引するという、リーダーとしてのあり方を村田に教えた。

INTERVIEW
05

オープン&フラットな
環境を活用せよ

現在取り組んでいることのひとつが、若手の育成。プロジェクトの中での育成はもちろんだが、2019年からは新卒採用インターンプログラムに、2020年度からは新卒社員の入社トレーニングに参画している。

「本来は、先輩方に挑んでいたいタチなんですが、様々なプロジェクトを通じて若手を見てきた中で『なんだか縮こまっていて、もったいないな!』と思うことが多く、それをできるだけ多くの若手に伝えたいと思うようになりました」

というのも、かつての村田も初プロジェクトでは先輩に対し「分からない」と伝えることができず、回り道をした苦い経験がある。

「私の場合は認められたいと意地になってたというのもあるのですが、今思えば、こんなオープンでフラットに接してくれる先輩に囲まれている環境を活用しない手はないと思います。シグマクシスは変わり者もたくさん採用している多様性重視の文化ですから、目立つとかはみ出すとかを気にする必要はない。むしろ自分らしさを生かすためにも、まず疑問や異論はどんどん出して自分の殻を破ってほしいと思っています」

2020年度からは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、新卒トレーニングはオンライン形式を取り入れているが、村田はできるだけ対面で伝えたい、という思いがある。「オンラインでオープンになるのは、なかなかチャレンジングです。やはり人が心を開くには人間同士のかかわりがあってこそだと思いますから。もちろん安全第一ですから状況への対応は大事ですが、オンラインとオフラインの良いところを組み合わせて、新人一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すことに挑みたいと考えています」と、意気込みを見せる。

INTERVIEW
06

感情を大切に、
人間らしくありたい

プロジェクト活動においても、掲げるテーマがある。AI活用を専門領域としてきたこともあり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は自身のテーマとして避けて通れない。ただ、まだ“DX”はバズワード的な側面もあり、根っこから理解して語れる人は多くないのも現状だ。「DXは技術だけを見られがちですが、戦略と実装までの全て揃って実現するものであるはず。その全フェーズでの経験を積み、自らの言葉で『DXとは何か』を語れるところまで、まず行きたいです」と語る村田は、これまで実装フェーズのリーダーを担うことが多かった。各産業でどのようなデータとアルゴリズムを使うことで、ビジネスに何が起こせるか、設計、検証、実装を繰り返すことで、ビジネスとテクノロジーとアカデミックの領域を繋いできた。

「その中で、業界を超えたAI活用の共通点や、データやアルゴリズムの応用も見えてきました。自分の目で見出だしてきたことを生かす戦略を創ることにもチャレンジしたい。そして創った戦略を実行し、企業や社会を変えて行く一人になりたいです」

元来は人懐こく、人間くさいイキモノです、と自己分析する村田。「AIを扱っているせいか、冷たい人って思われがちなんですが、全然違いますよ!!」と全力で否定。「もともと世の中や人々に役立ちたいと思ってこの道を選んでいますし、AIを知れば知るほど人間の面白みが分かって来るんです。特に人間が持つ感情は、AIにはどうしても予測ができない、パターン化できないもの。だから私自身も感情を大切にし、素直に人間らしく、面白くありたいと思っています」

INTERVIEW
07

学生のみなさんへのメッセージ

『何の気なしに生きるな』-これは学生時代に、教授に口うるさく言われた言葉です。当時は「うるさいな」としか思っていませんでしたが、今では私のモットーになっています。どんな些細なことでも、何のためにやるのか、何をしたら良い方向になるのか、どうしたらうまくいくのかを心掛けることで、コンサルタントでも必要とされるスキルを日々の生活で実践的に習得することができているからです。

「無意識にやっていることを意識して考える」というのは、簡単なようでなかなか難しいことです。みなさんも、一度やってみて下さい!物事の見え方が変わりますよ!

Profile

村田圭吾
Digital & SaaS シェルパ AI 
マネージャー

筑波大学理工学群社会工学類卒業後、筑波大学大学院システム情報工学研究科を2015年に卒業。同年、シグマクシスに新卒入社し、不動産業界向けシステム構築プロジェクトマネジメントに参画。その後は、製造、化学、小売りなどの業界に向けたAI活用プロジェクトの経験を積む。「産官学連携」を自身のテーマのひとつとし、テクノロジーの力を人々の生活に届け、より豊かな社会を創ることを目指す。趣味はゴルフ、スノーボード、キャンプといったアウトドアの活動。学生時代に時給目当てではじめたゴルフのキャディのアルバイトをきっかけに、人間観察が癖になったという無類の人好き。

(2021年6月取材)

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