第3回"IT組織変革"勉強会 開催レポート：花王 原田特命フェローが語る、事業価値を最大化するIT部門への変革

技術の進化に伴い、企業がITに求める役割は「業務を支えること」から「事業そのものを変革し、持続的な競争力を生み出すこと」へと大きく変化しており、IT部門の役割や組織のあり方は、経営アジェンダのひとつです。シグマクシスは、「IT部門が企業変革を推進する中核となる」という考えのもと、これまでIT組織変革を実践されてきたCIOをお招きし、変革の具体的なプロセスを学ぶ “ IT組織変革”勉強会シリーズを企画・運営しています。

2025年11月7日に開催した第3回“ IT組織変革”勉強会では、 花王株式会社（以下、花王様）特命フェロー（元CIO）原田 良一様をお迎えし、「『何を目指して』『どう変えたか』～何を大切に思って行動してきたのか～」と題するご講演をいただきました。

本レポートは、より多くの企業様の変革に役立てていただくことを目的に、原田様および花王様の許諾をいただき、勉強会の要諦を掲載します。

原田様は、「これからのIT部門に求められる役割が、正解があらかじめ分かっている領域に取り組むことから、正解のない領域において、ITやデジタルを駆使して何を生み出せるかを問われることへと変化している」と強調されます。

一元化や標準化を価値基準とする時代から、「何を目指すのか」というゴールを起点に、自ら考え抜かなければならない時代へと突入しました。ITやデジタルを用いて、いかに未来を構想し創造していくかが、これからのIT部門に求められる真価だと言えます。
そして、この新たな役割を果たしていくためには、変革を強力に推進できる「人」と「組織」の存在が不可欠であると続けられました。

変革を成功に導くうえで欠かせない要素の一つが、「部内外の社員の巻き込み」であると原田様は言及されました。具体例として、コロナ禍における、IT活用発信サイトを通じた取り組みや、世代横断的なメンバーによるオフィスのフロアリニューアルなどの事例を紹介。部内外の社員との接点を積極的に増やす活動を継続した結果、形になったものだといいます。この他にも、システム基盤の構築やデータドリブン経営への変遷といった施策にも触れられました。
こうした複数の施策を通じて、「情報システム部門を起点に経営へ貢献する」というミッションを具体化できた背景には、組織を牽引する立場としての姿勢が大きく寄与していると続けます。

「リーダーが構想を開示し、メンバーから意見をもらい、再度方向性を示すというように、オープンにメンバー全員と語り合うことが大切だ」と、原田様はリーダーシップの在り方の重要性を強く訴えます。まずは、ワクワクするような未来や夢を語り、その実現の過程で困難な局面に直面した際にこそ、メンバーへの感謝を示す姿勢が重要であると述べられました。

統括に就任されてからは、「未来を見据え、そこに向かってどのようなステップを踏むのか」を絶えず考え抜いてきたと振り返ります。リーダーシップに単一の正解はないものの、リーダー陣に必要な5つの能力として「俯瞰力」「柔軟性」「突破力」「ストレス耐性」「ユーモア」を提示。中でも、ユーモアをもって笑いを生み出すことが、組織に良い影響を与えると強調し、講演を締めくくられました。

原田様のご講演は、花王様がグローバル競争を勝ち抜くための中期経営計画を達成するうえで、IT部門がいかにして従来の業務支援から、経営に貢献する戦略的な中核組織へと変革していくか、その道筋を示すものでした。
社員とのオープンな対話を通じて実現したい未来像を共有するリーダーシップ、競争力の源泉となる人材育成とチームマネジメント、そして戦略的なIT投資マネジメントの実践は、多くの企業にとって変革を推進するうえで大いに参考になるのではないでしょうか。
シグマクシスは、今後も本勉強会の開催を通じて、このような実践的な知見を共有する場を提供し、日本企業全体のIT組織変革と価値創造に貢献してまいります。