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IFRS新時代 ~迫られる連結経営への転換~(4)

執筆者:太田 寛 (パートナー)

プロフィール詳細

太田 寛
太田 寛
Hiroshi Ota

パートナー
専門分野:経理財務

航空会社システム部門、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。流通、製薬、運輸、製造等の幅広い業界に対し、経理財務分野のコンサルティングを実施。プロセス変革、経営管理、システム導入、内部統制強化等のプロジェクトを得意とする。

IFRS適用への取り組み状況

さて、IFRSサーベイの結果をもとに、日本企業のIFRS対応の現状と意識を整理してみよう。
図3に示すように、取り組み開始時期を2010年からとする企業が最も多く、40%強を占め、次いで2009年から開始した企業が30%あった。また、図4に示すように、多くの企業が「事前調査・情報収集」段階と回答しており、全体的には準備段階であると言えよう。
子会社数別にみると、子会社数50社以上の企業では、「影響分析」、「会計処理方針検討」段階の企業が、いずれも33%となっており、子会社数が少ない企業と比べて、検討が進んでいる。企業規模が大きく、子会社数が多い企業では、進捗スピードに時間を要するため、早めの取り組みが必要との認識が高いと言えよう。

<図3>

<図4>

本格的な検討はこれからだが、取り組み意識が当調査でうかがえる。図5に示すように、30%以上の企業が、IFRSという新たな会計基準を如何に適用していくのかという議論のみならず、IFRS適用に伴い、業務プロセスの標準化、財務会計・管理会計の統合、業績評価、および予算管理プロセスなどのテーマに見直しの必要があると考えている。また、図6はIFRS適用にあたっては、50%以上の企業が、経理・財務部門以外に、情報システム部門、経営企画部門、各事業部門などの関与が必要と考えていることを示している。 つまり、企業は、経理部門のみならず、様々な部門と協力し、全社的な取り組みとしてIFRS対応を進める必要があると認識していることがわかる。

<図5>

<図6>

しかし、現在の検討の中心は、日本基準とIFRSとの差が何か、そして自社にとって影響がある会計基準に関しての動向にフォーカスがあたっており、経理部主体の決算関係の取り組みとなっている。経理部門の主たるミッションのひとつが適切な財務諸表の作成と開示である上、人員不足も重なって、会計技術論以外の関連テーマの検討に目を向ける余力がなく、IFRSベースの財務諸表を一定の品質、スピードおよび効率性をもって開示できるように対応することに集中する傾向にある。これでは10年前の連結重視への転換の際の対応レベルと同じであり、連結経営度の向上にはつながらない。事実、多くの企業では3年後のグループ全体での統合レベルは今より高いものの、まだ緩やかなレベルと言わざるを得ないことは既述のとおりである。
一方、統合企業に限定して取り組み姿勢をみてみると、非統合企業と比べてIFRSへの取り組み意識に差があることがわかる。全般的に統合企業の方が、関連施策への取り組み意欲が高く、特に業務プロセスの標準化と財務会計・管理会計の統合については、意識の差が大きかった(図7)。

<図7>

また、これらの意識の差は3年後の姿にも差となって表れている。統合企業では、業務のシェアードサービスを除く、ほぼすべての項目においてグループ全体で統合できている状態を目指しているのに対し、非統合企業では、会計方針の統一と勘定科目の統一の推進に留まっている(図8)。

<図8>

以上のように、現在連結経営が進んでいる統合企業は、連結経営施策をこれから本格検討に入るIFRS対応と関連付けて取り組み、3年後にはさらに統合レベルを高めようとしている。これに対して、現在連結経営が進んでいない非統合企業は、統合レベルを高める意欲はあるものの、統合企業に比べると、その目標レベルは低く、IFRS対応と連結経営施策との関連意識が低い。このような意識でIFRS対応を本格的に開始すると、非統合企業は、3年後には、統合企業との間でさらに連結経営度の差が開き、それが業績の差となって表れることが懸念される。