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IFRS新時代 ~迫られる連結経営への転換~(2)

執筆者:太田 寛 (パートナー)

プロフィール詳細

太田 寛
太田 寛
Hiroshi Ota

パートナー
専門分野:経理財務

航空会社システム部門、外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。流通、製薬、運輸、製造等の幅広い業界に対し、経理財務分野のコンサルティングを実施。プロセス変革、経営管理、システム導入、内部統制強化等のプロジェクトを得意とする。

なぜ連結経営への変革の機会か

IFRSには、連結経営モデルへの転換を促すいくつかの特徴がある。

1つ目は、企業グループ内で同一の会計処理の適用とその維持を求めている点である。そのためには、グループ全体としてのルールとそれを遵守し続けるための仕組みが必要となる。グループ全体の業務プロセスの標準化や業務の集約化、プロセスガバナンスモデルの変革、共通システムの整備などの推進を検討する機会だといえる。

2つ目は、原則主義を採用している点である。これにより企業は、自社および自社グループのビジネスモデル・取引に照らし、IFRSで定められた原則規定に沿う適切な会計処理を適用する必要がある。これにより、本社の経理部門は、IFRSが定める本質を理解した上で、主体的に自社グループに相応しい会計処理を適用し、その合理的根拠を示す役割を担うことになる。これまで、企業内部で最終的な個々の会計データのチェックを行う役割を担ってきたが、これらの役割はシステム的な仕組みやセンター化などによって果たされ、本社経理部門はグループの会計方針を示し、それが例外なく遵守される仕組みを構築・維持していく役割を担うべきである。さらには、グループの会計情報を事業部門へ提供し、成長をサポートする機能も果たすべきである。このように、原則主義の採用は、本社経理部門の役割や事業部門との関わりを変革するチャンスだといえる。

3つ目は、実際の経営判断に利用している管理セグメントによる開示を求めている点である。企業内部と外部の投資家との情報格差を極力排除することを目的として、IFRSではこのような規定を定めた。今まで以上に、企業の内部管理レベルが外部の目にさらされることとなるため、内部の管理レベルを高めないと、外部からはこの程度の情報で経営の舵取りをしているのかと評価される可能性もある。グループ全体での経営情報、特に事業セグメントに関する情報については、適時、適切に報告される仕組みが必要である。そのためには、法人格の枠を越えて、データ定義の統一、マスタ類の統一、情報収集の仕組みなどを整備していくことが求められる。この点で、グループ全体の経営管理の仕組みを見直すタイミングにあるといえる。

4つ目は、包括利益の導入である。純資産の増減が重視され、資産が公正価値で評価されることになるため、企業グループでの資産管理の重要性が増すことになる。保有資産の整理とともに、リスク管理の仕組みを検討する必要がある。当然、このリスク管理の仕組みはグループ全体で構築することが求められる。

以上のような特徴を持つIFRSを適用するにあたっては、一部企業活動のあり方を変える必要がある。しかも、それは全てにおいてグループ単位での対応が求められる。日本企業は、今こそガバナンスモデルの変革に積極的に取り組むべきである。