不確実な時代のマネジメント(4)

不確実な時代のマネジメント(4)

執筆者:渡邊 達雄(パートナー)

プロフィール詳細

渡邊 達雄
渡邊 達雄
Tatsuo Watanabe

パートナー/ソリューションサービス リーダー
専門分野:製造、製薬、業務改革、シェアードサービス/アウトソーシング、経営管理

外資系コンサルティングファーム 経理財務コンサルティングサービスリーダーを経て現在に至る。主に製造業のお客様に、業務のプロセス改革からシステム再構築、シェアード化の推進など一貫した改革をご提案・実施。
また近年では業務アウトソーシング、業務のオフショア化などを推進した実績を有する。

キャリア選択 多様化重要

企業が競争力を維持する上で何が最も不確実な要因であろうか。「自社の社員の能力」と言われたら皆さんはどう思うだろうか。質の高い商品を安定供給すればよかった時代の製造業では、価値創造の場が工場にあり、生産効率の高い組織を支える均質な人財が求められた。今は顧客への提案や対応への満足度はカギになりつつある。
顧客の価値感とライフスタイルも多様化をきわめている。百円ショップに高級外車でやってくる人がいるように、性別や国籍、年齢、居住地域、収入だけで、顧客の行動特性は読み取れなくなっている。このような時代の企業に求められるのは、従業員の多様性(ダイバーシティ)だ。
ある企業で、若手社員に「どのような状態になれば自分が会社から認められていると感じるか」という調査をしたところ「管理職になった時」と答える割合が非常に高かった。これは企業が社員のキャリアを画一化した結果だろう。
このような企業が多様化を推進しようとすると「女性や外国人の管理職の数を増やす」という安易な数値目標の設定に流れがちだ。多様化を促進するには、管理職をキャリアの頂点とする組織の価値観を真っ先に正すべきだろう。人財の多様性は、社員を画一性から解放することによってもたらされるからだ。
フレックスタイムやプロジェクトチームなど、多様な働き方への取り組みが始まっている。これらを有機的に統合し、社員のキャリア選択を多様化することが重要だ。
当社では、お客様への提案価格を決める上での権限を社長は持たないし、プロジェクトのメンバーは責任者が決める。お客様の前では、そのお客様との関係性に責任を持つ人間が、社内の所属長より大きな権限を有する。特定の技能に秀でた人間は、専門家としてプロジェクトに迎えられ、その内容に影響力を持つ。
組織でのリーダーシップが局面と役割によって変わるのだ。際立った多様な能力が組み合わさることで、変化を繰り返すお客様の期待に応え続けることができると考えた結果だ。
最も不確実だが、競争力実現に大きな効果をもたらすのが人財である。人財の多様性の実現がリスク管理の最大のテーマだ。

※この論文は、日経産業新聞(2009年6月2日から5日)に掲載されたコラムの再掲載になります。