不確実な時代のマネジメント(3)

不確実な時代のマネジメント(3)

執筆者:渡邊 達雄(パートナー)

プロフィール詳細

渡邊 達雄
渡邊 達雄
Tatsuo Watanabe

パートナー/ソリューションサービス リーダー
専門分野:製造、製薬、業務改革、シェアードサービス/アウトソーシング、経営管理

外資系コンサルティングファーム 経理財務コンサルティングサービスリーダーを経て現在に至る。主に製造業のお客様に、業務のプロセス改革からシステム再構築、シェアード化の推進など一貫した改革をご提案・実施。
また近年では業務アウトソーシング、業務のオフショア化などを推進した実績を有する。

前提と乖離なら対策迅速に

前回、事業計画達成に影響する項目を「不確実な要因」として洗い出し、その「前提値」を決めて管理対象とすることを提唱した。不確実性マネジメントにおいては、前提値の変化を敏感に察知し、即座に対策をとることが重要となる。
気候や気温など、直接コントロールできないものが「不確実な要因」となることも多い。だが、気温の変化から予測される来店者の購買行動の変化を即座に把握し、販売戦略に反映させることは可能だ。
レジャーランドでは、お客の行列が想定より長くなっている施設には、行列が少ない施設から人員を派遣し、処理能力を高めるといった対応もできる。起こりうる前提値の変化に対して事前に対応策を決め、兆候が見えたら即座に行動することが重要なのである。
対応策を講じても、変化に対応しきれないという状況が発生した場合、これは変化のマグニチュードが、自社の経営資源の範囲内でコントロールできるレベルを超えていることを意味する。経費の大幅な節減、商品点数の見直しや人員見直し、支店・店舗の統廃合なども含めた、経営資源そのものの見直しを図らざるを得ない。
この場合も前提値と現実がどの程度まで乖離したらアクションを発動するか、シミュレーションしておくべきだろう。
状況の変化に応じて、センサーを働かせているかのように各種の対応策を機敏に打ち出す手法を「センシティビティ・マネジメント」という。日本企業は一度計画を立てると、それを計画通りに遂行することに集中しがちだ。しかし過去の経験の蓄積をもとに作られた計画が、明日も正しいとは限らない。
ある外資系企業は業績の達成度にかかわるリスクの高まりに応じて、コスト抑制、売り上げ促進の両面で対策を発動している。四半期が終わるといったん解除されて通常に戻るが、状況によってはまた発動されるといった具合だ。
当社では売り上げに影響するものとして、契約額や成約スピードなどを管理している。売り上げに減少傾向が見えるときは、どの要因の変化によるものなのかを即座に把握し、事前に設定したいくつかの対応策を実行する。現象が起こる前に手を打つセンシティビティ・マネジメントは、先の見えない時代に最も有効だと考える。

※この論文は、日経産業新聞(2009年6月2日から5日)に掲載されたコラムの再掲載になります。