ホワイトペーパー
不確実な時代のマネジメント(1)
- 執筆者:
- 渡邊 達雄 (パートナー)
リスク管理、産業界の課題
昨年9月の米大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻に引き続き、11月のトヨタ自動車の業績見通しの大幅下方修正に見舞われて以来、我が国でも経済不況が進展している。
製造業を中心とする在庫調整がかつてないほどのスピードで行われ、非正規社員の雇用問題にまで発展した。ひところのパニック状態から脱しているものの、企業は先行きの見えない経営を今も迫られている。
企業の幹部らから話を聞くと、厳しい環境での事業目標達成に注力しつつも、今後のリスク管理がどうあるべきかについて模索し始めていることを感じる。
リスク管理という概念は金融業界における与信リスクやALM(資産・負債の総合管理)の領域から生まれたものだ。ここ数年の企業の不祥事、事件・事故の多発、個人情報保護法や内部統制の強化などにより、金融以外の産業でも経営課題になっている。
先進企業は内部統制対応に一区切りつけ、事業に関するリスクを定義し、統合的管理に着手しようとしていたところだ。そこに起きたのが金融危機である。
リスク管理とは、不測の事態に備えて対応策を準備し、常に変化をモニタリングし、適切な対応を打ち出し続ける事ことにほかならない。これまでの日本企業にリスク管理へのアプローチを見ると、為替変動や情報漏出といった身近なリスクへの対応ばかりが先行し、企業経営そのものへの影響度を軸にした本質的な議論が後回しにされていた傾向がある。
今、大切なことは、経営にリスク管理の技法をいかに取り入れて生かしていくかだ。企業にとってのリスクとは、企業存続が困難な状況を発生せしめる因子だけではなく、事業計画の達成を阻害する可能性のある因子でもある。
「事業計画を遂行する上で前提として確実なことと不確実なことを挙げてみてください。不確実なことへのモニタリングや不測の事態への備えはできていますか?」という問いに皆さんはどう答えるだろうか。
不確実な時代のマネジメントは、企業のマネジメント層が「自ら計画達成に対する不確実なことを特定し、モニタリングし対応すること」だ。次回は、具体的にどのような不確実性マネジメントが必要かについて論じたい。

※この論文は、日経産業新聞(2009年6月2日から5日)に掲載されたコラムの再掲載になります。
